ダイナマイト漁

 ダイナマイトは、おそらく戦争の前からやっていたのだと思う。そうでなければ、戦後すぐにあんなに広まらなかったと思う。多くの人がやりだしたのは戦後だけれど。ダイナマイトのやり方は先輩に教わった。

 はじめの頃は全部自分たちで作っていた。いろんなつくりかたがあるみたいだけど、僕らのやりかたはこう。まず雷管は浜に埋まっているので、掘り出してきて、よく乾かす。金属で出来ている部分の接触が悪いと火の着きが悪いので、細い木なんかでいじったりした。導火線は、火薬を紙で巻いて作っていくんだけれど、あんまり強く巻くと燃えるのが遅いし、ゆるく巻くと燃えるのが速過ぎるので、この加減が難しい。作った人によって燃える時間が違い、爆発するまでの時間の見当がつかなくて危ないので、人の作った物は使えなかった。火薬は、不発弾を探してきて、(おそらく信管をはずされたもの)大ハンマーで火薬を取り出す。入れ物は、肥料袋といって、水にぬれても大丈夫な、ダンボールのような紙で出来た袋があって、それを筒状に巻いて、下端を強く縛って水が漏れないようにして、裏返し、そこに火薬を詰める。または瓶を使う。火薬は大抵半欣(約300グラム)使用した。必要に応じて、二つ合体させて使った。

 はじめの頃は、線香を水にぬらさないように、葉っぱで包んでもって行き、それで息をフーフーしながら導火線に火をつけていた。導火線が買えるようになってからは、燃える時間が一定になった。約一寸で水深二から三メートルだった。その頃からは、線香を使わずに、あらかじめ導火線の根っこにマッチを3本結んでおき、爆破の直前に、水深に応じて導火線を斜めにカット(火薬の面が大きくなるように)し、そこをマッチの方に折り曲げてマッチを擦る。そして着いたか着いてないか見ないですぐに投げる。間違えると命が無いので、とにかく素早く投げる。火は、海の中でも消えない。ダイナマイトが沈んでいって、ドーンと水柱が上がるので、それから魚を集める。ダイナマイトで獲った魚は、外見は普通だが、骨が折れていることが多い。タマン(ハマフエフキ)などはダイナマイトに弱いが、ウラカーエー(ゴマアイゴ)などはダイナマイトに強かった。ボラ等はダイナマイトが着水すると、はじめサッと散るが、すぐに集まってくるので、その時に爆発するように導火線を少し長く調節する。クチなどでやる時は、はじめに小さいダイナマイトを使う。そうすると、死んだ小さい魚を狙って、大きなガーラ(ロウニンアジ)やウムナー(キツネフエフキ)などが集まってくるので、それから本命のダイナマイトを爆発させる。ダイナマイトをやるとサメもたくさんくるよ。サメも喜んで魚を食べている横で、いっしょうけんめい魚を集めるわけさ。

 昔はよくダイナマイト漁をやった。その頃よく一緒にダイナマイトを使っていた兄さんと一緒に、轟川の河口に行ったときのこと。

 河口に大きい石があって、隙間が空いているところがある。そこの前にチブがあって、時期になるとボラが集まるさ。今ではボラなんか誰も見向きもしないが、あの頃は魚は魚だからよ。それで、このチブにダイナマイトをやりに行ったわけさ。そうしたら、亀石の前に流れの強い所があるだろ?あそこに大きなラワンが流れてきているさ。

「おい、兄さん。あそこにマギイ(大きい)ラワンがあるよ。」というけど、「あんな遠くが見えるわけがあるか」というさ。僕はあの頃は若いから目もいいよ。「本当だよ。早く行って印をやろう。」というけど笑って聞かないさ。

 あの頃はラワンと言うのはものすごい値段だから、しかも本当に大きな大木だよ。あんなのは見つけたもの勝ちだから、「早く早く」といっても信じないので、もうこの兄さんは捨てて、走って亀石の所に行って、僕のという印にラワンに石を乗せて置いたよ。それで帰って、友達に大工をやっているのがいたから、この友達に材木屋に連絡させてとりに来させた。45ドルで売ったよ。それで、このダイナマイトの兄さんと半分こしようとしたけど、はじめ信じなかったので、いらないというさ。だけどそれでは僕も面白くないので、「じゃあ兄さんが20ドルで僕が25ドルで、僕が5ドル余計に貰うさ」と言ったら「うんわかった」といったのでそうしたよ。
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