このサイトについて

 このホームページは、僕の職業であるウミンチュ(漁師)と、僕の仕事である、素潜りによる電灯もぐり漁(夜間潜水銛漁)についてのページです。
僕です
 いろいろ考える所があって、この仕事を選んだわけですが、僕はもともと普通のサラリーマンの家庭に育ち、漁業とは縁もゆかりもない暮らしをしていました。
 僕は「何でも理屈はよく知ってるけど実際が伴わない」という現代っ子に良くいるタイプの人間で、様々なメディアや学校から、大量の知識を詰め込むだけ詰め込んできた人間でした(今でもそうですが…)。理屈では、スーパーに並んでいる魚や肉は、もともとは自然(今は肉の場合は牧場ですし、魚も養殖が多いですが)の中で暮らしてた生き物だというのはよく知っているわけですが、実際に殺して、それが食品になることを「体感」していたわけではなかったのです。

 魚はまだしも、初めて知り合いの猟師に、獲ったばかりのイノシシの肉をもらったとき、それは「肉」ではなく「死体」でした。はっきりいって、生暖かい「死体」なんです。それを食べるっていうのは結構ショックでした。
 僕は夜、水中ライトを片手に、海に潜って、銛(モリ)で魚を突いて獲る、こちらでは「電灯潜り」という漁法をしているんですが、石垣島にはサメ(メジロザメとかイタチザメが多いです。)がたくさんいて、しょっちゅう(多いときは一晩に4、5匹くらい)見るんです。最初この仕事を始めたとき、サメがついてまわるのがとても怖くて、気が気じゃなかったんですが、先輩のオジーが、「魚を殺して生きてるんだからいつかは魚に殺されても仕方ないだろ。」と、冗談とも本気ともわからない口調で言ったとき、これまたものすごいショックを受けました。

 目から鱗というか、人間が自然と共に生きるということは、こういうことなんだなというか、なにか今の人間社会に光が見えたというか、まあそこらへんは徐々に考えていくということで、要するに、自己満足なんですが、県の水産振興課にいる後輩のYくんに「南方系原始漁業」と言わしめた、素潜りでの電灯もぐり漁を 自分も含めて、文明の利器に囲まれたヴァーチャルっ子達に紹介するというか、今の日本に、こうやって生活してる人たちもいるんだよということを知ってもらいたくこのホームページを開設したというわけです。
 実際、漁師というと多くの人が、パンチパーマにねじり鉢巻、寒風吹きすさぶ日本海、歌っていただきましょう「兄弟舟」…みたいなイメージがあるみたいで、口で説明してもどうも分かってくれないようなので、このホームページで、こんな漁師もあるよというのがわかってもらえればいいなと思います。

 この仕事をやりはじめて、言葉ではうまく言えませんが、「生きる」ということがどういうことなのかちょっとわかったような気がします。そして「命」というものを考えるようになったと思います。まだまだ先輩達に比べれば、僕なんかは何もわかっちゃいないと思いますが、それでも直接生き物を殺して、その命がお金に変わるという不思議な現場にいるので、何か伝えることが出来ればいいな。 inserted by FC2 system